『55歳からの挑戦者たちへ』

20090619_神奈川新聞

20人ほどが整然とフォーメーションを組み、軽快に腕を回し足を上げ、ポンポンを振る。華やかさに深みがあるのは、64歳という平均年齢と無縁ではないだろう。

「チアの魅力は、体を動かし仲間と一つのものを作り上げること。チアを始めて人生が確実に変わりました。生きがいといえるのかも」
55歳以上を入会条件とするチアリーディンググループ「ジャパンポンポン」を結成したのは14年前。63歳の時だ。

もともと、50代でアメリカ留学するなど「何歳でも何でもできる」が持論。年齢に縛られてなどいないと思っていた。ところが、シニアのチアグループがアメリカにあると知って驚き、驚いた自分にもっと驚いた。

「チアは若者がやることと思い込んでいたのです」。そんな自分を発奮させるべく早速挑戦することに。

まずアメリカのシニアチアグループに手紙を出し、詳細を教えてもらった。次に友人たちを食事に誘い、結成を呼び掛けた。そしてその足で、ある大学のバトン部に指導者を探しに行った。部のキャプテンに「どなたがおやりになるんですか」と尋ねられ、「私たちです」。相手は絶句したそうだ。

当初は「振りを覚えられないし、体も動かない」状態だったが、発表の機会を得て、1曲を踊りきる達成感や人に見られる緊張感を知りがぜん前向きになった・
「半面、周囲から奇異な目で見られ、めげてしまいました…」。だがマスコミに取材されるようになり、理解者も入会者も増えた。結成7周年のチャリティーショーでは「勇気づけられた」「元気をもらった」という感想が圧倒的だったという。

仕事の方では、特別養護老人ホーム関係の特定非営利活動法人(NPO法人)に関わる。チアの方は今後、依頼に応じて出張する「元気お届け隊」の活動に力を入れたい。“生まれてきてよかった”と人生の最後に思えるような生き方をしたいし、ほかの人にもしてほしいんです」

アクロバティックな動きこそないが、格好よく生き生きとして、何より楽しそう。「55歳以上」ならではの素晴らしきチアリーディングである。